変形性膝関節症

変形性膝関節症とは

 変形性膝関節症とは、膝関節のクッションである軟骨のすり減りや筋力の低下が要因となって、膝の関節に炎症が起きたり、関節が変形したりして痛みが生じる 病気です。中高年の方に多い病気ですが、とりわけ女性に多く、50歳以降になるにつれて患者さんの数が増えていきます。


 発病初期は痛みがすぐに治まったり、痛みがあっても年のせいだとあきらめたりして病院を訪れる人が少ないのが現状です。一度発病したら若いころのような 膝に戻すことはできませんが、適切な治療を受ければ症状の進行を遅らせることで、普通に日常生活を送ることができます。


 痛みを我慢することや、年だからとあきらめたりする前に変形性膝関節症の正しい知識を身に付け、適切な治療を受けるよう心がけてください。

症状の現れ方、進み方は千差万別

 同じ変形性膝関節症でも、症状の現れ方や進み方は人によって千差万別です。X線写真では膝関節の変形が相当進んでいるのに症状がほとんどない人、逆にひどく痛むのにX線写真では変形がほとんど見られない人など様々です。
 変形性膝関節症の症状がどのくらい進んでいるかを知る手がかりとして、自覚症状があげられます。自覚症状は病気の状態をかなり的確に反映しています。

初期の症状 ―朝、膝に違和感を覚える―

 

 朝起きて歩き始めた時の「膝の違和感」が最も早く現れる症状です。この段階では、膝に力がかかる動作で痛みがでることもありますが、この痛みは長続きせず、しばらく休むと痛みがなくなる場合がほとんどです。
 なお、症状の進行は、人によって様々で、朝の違和感だけがずっと続いて、本格的な変形性膝関節症にならない人もいます。

 

中期の症状 ―症状が簡単には治らない―

 

  初期症状を放置しておくと、徐々に進行して症状が悪くなっていきます。まず、痛みがはっきりと自覚できるようになり、膝が完全に曲がりきらない、伸びきら ない状態が進み、正座やしゃがみこむ等の動作が苦痛になってきます。階段の上り下りもつらく、特に下りがつらくなります。
 また、炎症が起きてくるために、膝の周辺が腫れたり、熱感をともなったり、むくんだりしてきます。さらに、膝に水がたまって膝が張っているような重くだるい感じもでてきます。
 この段階では、膝の変形がひどくなり、膝に力のかかる動きをするとコリコリ、ガリガリといった軋轢(あつれき)音が出るような感じを受けるようになります。

 

末期の症状 ―さらに痛みがひどくなる―

 

  この段階になると、日常生活に支障が起こるほどの痛みになります。そのため、仕事をする、買い物に行く、旅行に出かけるなどの社会活動が思うようにできな くなります。活動範囲が狭まり、外界からの刺激が少ない生活になるとストレスがたまり、うつ状態に陥りやすくなります。また、高齢者の中には、こうした生 活(家の外に出ない)が続くと、痴呆の症状が現れてくる人もいます。
 この段階では、骨の変形が相当進んできますので、外見的にも関節の変形が目立つようになります。

変形性膝関節症は大きく2つに分類されます。

 変形性膝関節症は「一次性」のものと、「二次性」のものに大別することができます。変形性膝関節症の多くは、筋肉の衰えや肥満、無理な動作など多くの要 因が絡み合って膝への負担となり、膝の関節軟骨がすり減って発症します。このように明確な原因が特定できないものを「一次性変形性膝関節症」といい、 一方、けがや病気など原因となるものがはっきりとしているものを「二次性変形性膝関節症」といいます。

一次性変形性膝関節症の危険因子

  • 加齢
  • 女性
  • 筋肉の衰え
  • 肥満
  • 膝への負担の大きいスポーツの習慣
  • O脚や偏平足など足部の変形
  • 足に合わない靴およびハイヒール など

二次性変形性膝関節症の危険因子

  • 膝周辺の骨折による関節軟骨の損傷
  • 靭帯損傷
  • 半月板の損傷
  • 膝蓋骨の脱臼
  • 膝関節のねんざ
  • 慢性関節リウマチ  など

変形性膝関節症の治療法

 一度すり減ってしまった関節軟骨は、もとの完全な形に修復されることはありません。したがって、変形性膝関節症の治療は、痛みをとり、膝が完全に曲がりきらない状態や伸びきらない状態を改善して、膝の機能を高めることを目指して行われます。
 治療方法は、症状の進行度や痛みの程度によって異なりますが、薬物療法、温熱・冷却療法、運動療法の3つの療法が基本となります。これらの治療でも痛みが緩和されない場合に外科的療法を行います。

温熱療法・冷却療法

 関節炎による痛みをやわらげたり、炎症を鎮めるためには、患部を温めたり冷やしたりするのは大変効果的です。一般的に変形性膝関節症のような慢性の疾患の場合は、患部を温める温熱療法が行われ、膝が熱っぽく腫れているような急性の痛みには冷却療法が行われます。
 家庭で行える温熱療法には、お風呂に入って患部を温める方法や温湿布やホットパックを使って暖める方法があります。また、日ごろから患部にサポーターを 当て冷やさないようにすることも大切です。ただし、症状によってはこれらの療法で効果がない場合もありますので、最初は自分の判断で行わずに、医師によく相談してから始めるようにしてください。

 

運動療法

 運動療法には2つの目的があります。1つ目は症状の緩和です。運動をすることによって血行をよくし患部を温めて痛みを軽減させるほか、関節の動きをス ムーズにする効果があります。2つ目は病気の根本的な治療です。体を動かすと血流がよくなって、関節部分に栄養がいきわたります。すると、炎症の原因とな る老廃物がどんどん排泄されますし、細胞の活動も活発になり病気の進行をとめたり再発を防いだり、さらには治療効果まで期待できるというわけです。ただし、運動療法を始めるときには必ず医師によく相談してから行うようにしてください。

 

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